20世紀の出来事コラムとして
時代が下るほどに取り上げる事柄が卑小になる。終いにはミッチーサッチーなんて、ワイドショーレベルの事象が20世紀の1999年に起こったこととして、記録される。
(上)では世界史を扱おうとして大上段に構えていた感があるが、(下)では開き直って著者本来の世界に戻ってきた感じだ。殆ど日本の出来事オンリーの、それも週刊誌的発想の出来事回想録である(下)だが、悪いことばかりではない。戦後の日本人の振る舞い、あるいは戦争責任論として読むべき文章も散見される。
この本は著者自身「個人的な内容」と断っているように「20世紀史」として読むべきではない。あくまで20世紀各年の出来事コラム集である。
20
私のこの本のひそかなオススメは「逆読み」です 下巻を先に買い、2000年のところから読み出し、1999→1998→(略)→1902→1901年と読み、最後にまとめとして「総論二十世紀とはなんだったのか」を読んで終わる 私も最初は普通に読みましたが「この本逆読みが出来る」と思って2回目は逆に読んでいきました。昔から現在に近づいていくのと、現在から昔へ戻っていくのはちょっと受ける感覚が違います。
橋本治さんが縦横無尽に20世紀の歴史を解説:こんな教科書で学びたかった・・
小学校、中学、高校と歴史を習った。大学受験も日本史、世界史だった。が、すっかり忘れてしまっている。そして、二十世紀の歴史というものは、日本の歴史も、世界の歴史も結局、時間切れで、授業で習うということはなかった。大学の一般教養での歴史は、先生のご専攻の特定の時代の特定のテーマ。 かくして、20世紀の歴史については、教室では全然学ばず、学校から離れてしまった。これって、私だけの経験だろうか。いや、多分、ほとんどの方の経験なのではないだろうか。 そのような自分にとって、橋本さんのこの20世紀の一年、一年を、橋本治さんの問題意識でテーマを拾い、縦横無尽に結びつけながら、現代、今との結びつきを明らかにするこの上下の二冊を読んだのは貴重であった。第一次大戦・・セルビアってどうなったの?というようなことを初めて、この本で学べた。 ということで、自分の中に20世紀の歴史を習わなかったな、今、現在起こっていることとどういう関係があるのかな・・というぼくのような人にこの一冊はおすすめだ。また、上巻の最初の頃には、20世紀の歴史に関する橋本さんの洞察が展開されている。 ありがたい上下二冊だ。
面白い
この下巻で扱っているのは「1946〜2000」。 「1948年」の子作りの話、「1982年」のエイズの話、 締めとして「2000年」の話あたりが特に印象的。 「20世紀は19世紀の繁栄を謳歌したヨーロッパの妄想から生まれた」。 そして、19〜20世紀をかけて行われた経済戦争に勝ったのは日本だった。 やがて日本も躓いた。躓いたのに「20世紀」をまだ信じていた。 現在の社会体制は20世紀的に作られているので、「人間」と「社会」との 差がかなり広がってしまっている。 既存社会の枠組をそのまま信じるのではなく、自らの欲望をしっかりと見詰め、 その先に他人との関係を考えなければならないのだろう。 「上巻」の方にはプロローグとして「総論」が付いており、 そこでは「家内制手工業」を勧めている。
筑摩書房
二十世紀〈上〉 (ちくま文庫) 恋愛論 (SB文庫) これも男の生きる道 (ちくま文庫) いま私たちが考えるべきこと (新潮文庫) 失楽園の向こう側 (小学館文庫)
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