1年1コラム、4ページ。1900年から2000年まで、本文だけで404ページを要した20世紀の総括。時代と社会に関する当事者意識に満ちた本文に加え、巻頭には、約40ページに及ぶ総論「二十世紀とはなんだったのか」が付されている。 記述は、実感に満ちたきわめて「橋本的」なもの。編年体の構成をとって語られた歴史事象の膨大さや、著者の歴史知識の幅広さにまず驚かされるが、読むうちに強く印象に残るのは、「客観性」という制度化したバイアスをくぐった「史実」に飽き足らず、そこに自分の体験を対峙させていく著者の執拗な手つきである。体温の残る場所から「歴史」を丸ごと語り直そうとする、このある意味で無謀な試みにこそ、本書の真骨頂があるのだと感じる。 ?「橋本式紀伝体」といってもいいようなこの方法は、50年代以降の記述に至って特に輝きを増す。たとえばプロレスや東京オリンピックを見たときというような、著者の個別の述懐をたどるうちに、個人の記憶が生々しく舞い戻り、それがやがて同時代体験という共同性に浄化するのである。 この体験は、著者とのオピニオンの共有を強制などしない。ただ、自分もまた時代の当事者であるという基本的な認識に我々を導くだけである。「強制」ではなく「共生」を喚起してよしとするこのすぐれて個人的な精神こそ、20世紀が看過して顧みなかったものなのではないだろうか。(今野哲男)
文庫本ではなく、こちらを読むべし
この本はいろいろな読み方ができます。
1.二十世紀の主な「出来事」を知りたい
2.二十世紀の主な出来事の起きた「年」を知りたい
3.自分の生まれた年の歴史上の「意味」を知りたい・考えたい(解釈はもちろん橋本流なので、それを踏まえた上で)
4.生まれた年だけでなく、「自分の生きてきた時代の意味」を知りたい・考えたい
5.二十世紀が何者かを理解して、二十一世紀を考えたい
6.1945年以前を、「戦前・戦中」以外の文脈で知りたい
以上のどれか一つでもピンと来たら、購入をお勧めします。手元に置いておくと役に立ちます。特に、6に反応した方、あるいは、日本の現代は何でもかんでも「戦前」と「戦後」で語られてしまうことが多いことに違和感を持っている方にお薦めです。1920年?1940年を「戦前」で括るのは、あまりにも愚かなことがわかります。また1970年生まれの私は、本書を読んで、1989年(平成元年)の持つ意味を改めて考えさせられました。
この本を読み込むと、ある年と他の年を比較しながら読むことが多々出てきます。文庫版ではなく、こちらの単行本の方が、その意味でお買い得です。
意味
たいていの歴史の本は「事実」と「雑学」しか書いていません しかしこの本にはその「事件の意味」がきちんと書いてあります「ああ、そうか、歴史で習ったこの事はこういう意味だったのか」という感想です 20世紀の100年がどのように流れていったのかがわかります。冒頭の「総論・20世紀はなんだったのか」も素晴らしい。 この本は何日かに分けて読まず、まとまった時間を作って1日で一気に読んだ方がいいと思います
実に面白いです
橋本氏の著作はこれまでほとんど読んでなかったんですが、まず「『分からない』という方法」を読んで、私の考えていることと同じようなことを考えておられることを知り心強く思い、また、養老孟司氏の著作で強調されていることと通じるところをあり、もの凄く面白く読みました。最近読んだ哲学関係の本のいずれよりも「哲学的」であると思いました。 この「二十世紀」も、橋本氏の経験、および思考で読まれた(考えられた)真の「歴史書」の一つであると思います。これまで私が読んできた「歴史」関係の著作の中で感動を覚えた数少ない本の一つです。カーの「歴史とは何か」、野田宣雄先生の著作、と同じくらい感動しました。 野田先生が言われている「歴史の危機」に通じるところもあると思った次第です。野田宣雄氏、養老孟司氏、橋本氏と、「歴史」を真剣に考えておられる方が日本にもおられることを知り、少し安心しました。くだらない「歴史教科書論争」の本などを読まれている方に是非読んで欲しい本の一冊です。
いっそこの本を教科書に
歴史教科書の記述をめぐってまたもや「過去の亡霊」が跋扈する昨今、この本は近代に対する正しい認識を与えてくれる。 自国の立場に拘泥せず、過剰な正当化や被害者意識を排して歴史を語るのは本当に難しい。誰も自分の国を「醜い」とは思いたくないし、また、たとえ明らかによその国の方に非があると思える場合でも、その国の国民感情を無視してただ非難するというわけにはいかない。 世界はそんなにも美しくはなく、あるのは正義よりも欲ばかりだ。しかしだからこそ私たちは知らなければならない。そして考えなければならない。戦争と繁栄の「二十世紀」が、たいしたものではなかったということを。そうでなければ、「二十世紀」が「二十一世紀」になっても、何も変わりはしないのだ。
毎日新聞社
ああでもなくこうでもなく 「日本が変わってゆく」の論―ああでもなくこうでもなく 3 さらに、ああでもなくこうでもなく 1999/10‐2001/1 戦争のある世界―ああでもなくこうでもなく 4 ぼくらの資本論―貧乏は正しい! (小学館文庫)
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